この夏も厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
人生100年時代、認知症などで判断能力が低下したときに備え、自分の財産をいかに守り、活用するかは、多くの方にとって重要なテーマとなっています。
今年6月、法務省の法制審議会から「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」が公表されました。これは、現行の成年後見制度の見直しを含むもので、今後の財産管理に大きな影響を与える可能性があります。
近年、新聞やテレビなどで、「成年後見制度」と「民事信託」が紹介されることが増え、ご存じの方も多くなってきました。実際に制度を利用するには、それぞれの長所と短所を理解し、上手に組み合わせる“いいとこどり”の戦略が注目されています。なお、「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標で、法律上は「民事信託」が一般的な用語です。「家族信託」は、家族を受託者とするケースに特化したわかりやすい呼称として普及しています。
成年後見制度は、判断能力が低下した方を法的に支援するための制度で、2000年に導入されました。「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
法定後見は、すでに判断能力が低下している方について、家庭裁判所が後見人を選任します。後見人は、財産管理(預貯金の管理、不動産の処分など)や身上監護(介護・医療契約の手続きなど)を行います。裁判所による監督があるため、不正防止の体制が整っています。ただし、後見人の選任は裁判所が行うため、必ずしも希望どおりにならず、制度の硬直性も課題とされています。
任意後見は、判断能力があるうちに信頼できる人と契約を結ぶことで、将来に備える仕組みです。本人の希望を反映した支援が可能ですが、公正証書による契約が必要で、契約発効時には家庭裁判所による監督人の選任も必要です。発効後は監督人への報酬も発生します。また、任意後見人には、本人が行った不利な契約を取り消す権限はありません。
民事信託は、信頼できる家族などに財産を託し、その管理・運用・処分を任せる制度です。どの財産を、誰に、どのように管理してもらうかを契約によって自由に決められ、希望を反映しやすい柔軟な仕組みです。不動産の管理や売却、リフォーム資金の確保など、後見制度では難しい内容もスムーズに実現できます。また、「後継ぎ遺贈型信託」により、死後の財産承継先まで指定することが可能で、遺言書の代替としても使えるほか、複数世代への資産承継も可能です。一方で、身上監護の権限がないため、後見制度との併用が必要になる場合もあります。契約書作成や登記には初期費用もかかり、受託者には一定の責任と負担が生じます。
両制度の“いいとこどり”戦略として、次の2つの組み合わせが考えられます。
① 民事信託+任意後見契約
判断能力があるうちに、財産の管理は民事信託、身上監護は任意後見で備える方法です。不動産などの資産管理は信託で、介護契約や入院手続きは任意後見で対応します。
② 民事信託+法定後見(必要時のみ)
まず民事信託で財産管理を行い、信託が機能しなくなった場合や予期せぬ事態には法定後見を申立てる方法です。成年後見制度を“セーフティネット”として活用する考え方です。
民法改正では、法定後見の柔軟化(支援内容・期間の限定化、後見人の交代など)が検討されており、より利用しやすくなることが期待されています。特に、すでに判断能力が低下して任意後見契約を結べない方にとって、新たな選択肢となる可能性があります。
一方、任意後見には「自分の意思で事前に備える」という魅力があります。法改正後も、判断能力があるうちは任意後見を検討し、それが難しい場合に法定後見を使うという「使い分け」は重要です。中間試案では、現在認められていない任意後見と法定後見の併用案も提示されており、将来的にはより柔軟な組み合わせが可能になるかもしれません。
これからは、多様な制度から自分に合ったプランを選ぶ時代です。法改正の動向を見守りつつ、「どんな生活を送りたいか」「誰に何を託したいか」を早めに考えておくことが大切です。
財産の内容や家族構成によって適した制度や組み合わせは異なります。まずは、お近くの行政書士にご相談ください。
