電子契約の活用について

 

3月になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

新型コロナウイルスの流行が続く社会で、密な状態を極力回避するため、「電子契約」が急速に浸透してまいりました。今回はこの電子契約について、簡単にご紹介いたします。

 

一般的に電子契約とは、契約書等の書面をペーパーレス化する技術ですが、密な状態を回避することにとどまらず、契約業務の合理化が実現でき、印紙税の負担も回避できることなどから、企業及び個人間の商取引の現場で注目が高まっております。

 

元来、契約は口頭の合意、いわゆる口約束のみでも成立いたしますが、業務上の重要な契約は書面を交わし、お互いに保存することが大前提でした。書面化することで、仮にその契約の有無や内容について、後々争いごとになったとしても、その内容について特定・立証が容易になり、契約による利益を公正に確保しやすくなるからです。

書面契約の場合、本人同士が確実に合意したことを示すため、両者の署名捺印がなされます。これによって、本人の意思によって捺印されたと推定され(一段目の推定)、本人の意思によって捺印された契約書は真正に成立した(二段目の推定)として、裁判でも有効な証拠として扱われることとなります(民事訴訟法228条第4項)。

 

では、電子契約では、どのように本人の真正な意思表示を判断するのでしょうか。この点については、電子署名という技術が採用されております。電子署名とは、いわゆる改ざんを防止する技術です。電子署名及び認証業務に関する法律(通称、電子署名法)上の電子署名の定義は、以下の3つの要件を満たすものとされています。

  • 当該情報(電子データ)について行われる措置(電子署名)であること
  • 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
  • 当該情報について、改変されていないか確認することができるものであること

 

この点、電子署名を行うために必要な情報(ID・パスワードのようなもの)を適正に管理することにより、本人だけが電子署名をすることができる場合には、真正に成立したものと推定され、署名または押印がなされた紙の私文書と同様の効果が、この時点で電子署名に付与されることとなります。

 

しかしながら、電子署名が改ざんされていないかどうかについては、契約書の作成名義人以外の第三者に認証してもらわないと、確認ができません。この確からしさを認定する作業が「認証業務」とされており、この中でも、「本人だけができるもの」として法令で定める基準に適合するものについて行われる業務を「特定認証業務」と定義して、電子署名の信頼性を確保しています。

それゆえ、電子署名に対する信頼性の高さは一般的に、以下の順となっております。

  • 特定認証された電子署名
  • 認証された電子署名
  • 認証がなされていない電子署名

 

ところで、法令により、必ず紙の書面にしなければならないものがいくつか定められております。しかし、平成十二年に制定された「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」、通称IT書面化一括法によって、書面にすることが定められていたもの一部を、送信者と受信者両者が電子文書にすることを希望した場合は電子文書にすることできるようになりました。

他にも保証契約書(民法446条第3項)など、個別の法令により電子文書化できる場合もございますが、定期借地契約書や任意後見契約書など公正証書での作成が予定されている書面、貸金業規制法等の契約を巡るトラブルが頻発している書面、国際条約に基づき発行が必要となる書面などは、見直しが進められているもの、その性質に鑑みて電子契約は適切ではなく、書面契約によるものとされております。

 

少し細かい部分までご説明してまいりましたが、電子文書化を適切に活用することで、業務上得られるメリットは決して少なくありません。書面の電子化については是非お気軽に、たよれる街の法律家である行政書士にご相談ください。