身近な契約の新しいお話

 

5月に入り、初夏を思わせるような爽やかな季節となってまいりました。

 

さて、これまで、このコラムでは相続に係る民法改正ついて、何度かご紹介してまいりました。(相続法改正については以下の記事もご覧ください。

 ①「遺言書」について/②「遺産分割」について/③「遺留分」について/④「配偶者の居住権」について

 

今回は契約(債権法)などに係る民法改正についてお話ししたいと思います。

今回の改正は、120年も前(明治29年)に制定された債権法を現在の社会経済に適合させるために実施されました。裁判や実際の取引などで、解釈として通用してきた基本的なルールについても、法律の条文の上で明らかになり、より親しみやすくなりました。

契約は私たちの日々の生活にも身近なものです。今回は、改正部分の中からほんの一部となりますがポイントをご紹介したいと思います。

 

①保証人の保護に関する改正

例えば、アパートの賃貸借契約や病院への入院手続きの際に、保証人としてサインをすることがあります。このような場合の保証は、通常の保証と違い「根保証」となるケースが多く見受けられます。

根保証には、保証の対象となる債務(賃料や入院費)が契約の時点では特定しておらず、最終的にどのくらいの債務を保証すればよいのかはっきりしないまま、保証人としてサインをするというリスクがありました。

今回の改正はこの点を見直し、保証人の支払上限額となる「極度額」を当事者間で明確に定めた上で、その合意した内容を書面等により記録しなければ、その根保証契約全体は無効になり、保証人に対して支払いを求めることができなくなりました。

この改正により、保証人だけでなく、今後は債権者にとっても保証契約の締結をより一層慎重に行うことが求められます。

②法定利率に関する改正

お金を借りた時などに、その利息を決める法律上の決まりを「法定利率」といいます。これまで、この法定利率は5%と規定されていましたが、近年銀行預金の利息など超低金利が続いている時代背景に鑑み、3%に引き下げられました。また、この法定利率は固定ではなく、あらかじめ利率の改定を想定して3年ごとに見直す条項も併せて設けられました。

③債権の消滅時効に関する改正

貸したお金や品物などの返済の催促を、ある一定の期間行わずに放っておくと、その金品の請求権が無くなって(消滅して)しまうことを「消滅時効」といいます。

これまでは、この消滅時効は原則10年とされており、例外的に職業の違いなどで10年より短い消滅時効が設けられていました。今回の改正では、この短期消滅時効の制度がなくなり、原則として消滅時効は、権利を行使できることを「知った」ときから5年か、「行使できるとき」から10年の、いずれか短い期間で完成(消滅)することとなりました。

④賃貸借契約に関するルールの明文化

貸家などの賃貸借契約において、広く一般にやりとりされている敷金については、これまで法律上の決まりがなく、地域によってその取り決めに違いがありました。

そこで今回の改正では、賃貸借契約が終了して賃貸物(貸家など)の返還を受けたときには、貸主は賃料などの借主の未払い債務を差し引いた残額を返還することが明文化されました。

ちなみに、この改正が適用されるのは、原則として2020年4月1日以降の契約となりますのでご注意ください。

 

行政書士は、契約書の作成業務も主力の業務であり、新民法に則した契約書の作成も承っています。契約書の作成などのことでお困りの場合にはお近くの行政書士まで、ぜひお気軽にご相談ください。