行政書士とChatGPT

 

今年も残すところ後2か月、あの猛暑が嘘だったかのように一気に秋めいてまいりました。皆様、体調を崩されぬようご自愛ください。

 

さて、今回のコラムは、いま何かと注目されている生成AI 「ChatGPT」のお話です。

この人口知能チャットボット(自動で会話をするプログラム)は昨年の11月に公開され、この1年で急激にその存在が知られるようになりました。業界によっては、その地位が脅かされ、存続の危機から使用中止を訴える団体が国内外で増えているとも聞き及びます。われわれ行政書士の業務も他人事ではないかもしれません。はたしてどのような影響があるのか、今回は行政書士とChatGPTについて検討してまいります。

 

そもそもChatGPTとはどういったものなのでしょう?この質問をChatGPTに投げかけてみました。以下は、その回答です。

「ChatGPTはGPT(Generative Pre-trained Transformer)アーキテクチャを基にしており、AIのテキスト生成ツールをベースに対話をサポートすることに特化しています。ユーザーとの対話を通じて質問に答えたり、情報を提供したりすることができます。
ChatGPTは大規模なテキストデータセットで事前トレーニングされ、さまざまなトピックに関する知識を持っています。ユーザーの一般的な質問やリクエストに、できる限り適切に対応することを目的としています。
ただ、ChatGPTは感情や心情を持つことはありません。ChatGPTはコンピュータープログラムの一部であるため、感情を持つことが出来ないからです。私はテキストベースの情報処理に特化しており、主観的な経験を持つことはできません。質問や情報提供に関するサポートをすることができますが、その中に感情は含まれません。また、法的なアドバイスを提供することもできません。」

 

回答までの所要時間わずか20秒あまり、完璧な日本語文章力です。内容を要約すると、得意なものは「あらゆる条件において、蓄積された大量のテキストデータから、質問に対して、できるだけ適切な回答を、対話形式で行うこと」であり、不得意なものは「感情がないので、心情や愛情は表現できず、法的な助言の提供はできないということ」のようです。驚かされたのは文書の途中から主語が私に変わっていて、あたかも感情を持った人間と対話しているかのような感覚になることです。

 

では、行政書士の業務とChatGPTはどのような関係になるのでしょうか。
われわれ行政書士の主な業務は、

①役所に提出する書類、その他契約書などの権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること、

②許認可申請等の手続きを代理すること、

③作成することができる書類について相談を受けること、

です。その業務範囲は幅広く約1万種類以上の書類の作成や取り扱いが可能と言われております。(ただし、他の法律で制限されている業務は除きます。)

これらの業務について、大規模なテキストデータで事前に訓練され、さまざまな状況に対応可能な知識を持っていると自負するChatGPTが対応できると仮定すると、相談業務などについては、かなりの部分をChatGPTに取って代わられるのではないかと、とも考えられます。

しかし、ChatGPTは、あくまでもAIベースのテキスト生成ツールです。確かに幅広いトピックについて、一般的な情報や回答を得ることには役立つでしょう。しかし、実際に法的な課題を解決することに関しては、行政書士の専門知識と、経験に基づく判断力が必要となります。AIが行政書士の業務をサポートするツールとして活用されることがあっても、最終的な法的アドバイスや判断は行政書士が行う必要があるのです。

 

また、ChatGPTは誤回答や著作権に関して、まだまだ課題が多いのも事実です。最近ではAIが作った文書か否かを見極めるソフト「GPTゼロ」が開発されており、その開発者は「取材して、記事を書き、事実確認をするというジャーナリストの仕事は、AIにはできない」と断言しています。これを行政書士に置き換えれば、「聞き取りをして、事実を確認しながら、依頼された目的の文書を作成するという行政書士の仕事は、AIにはできない」ということになるのではないでしょうか。

 

最後にChatGPTに、「相続とは」と質問をしてみました。その回答は以下のとおりです。

「相続手続きは国や地域によって異なり、複雑な法的要件があることがあります。相続手続きをスムーズに進めるためには、行政書士や弁護士に法的アドバイスを受けることが重要です」

 

現在ChatGPTも、めまぐるしく変わる情報の変化にデータの更新が追い付かない状況にあるようです。ただ、将来的には、日本の法務や行政手続きに特化した専門的生成AIが誕生し、われわれ行政書士と専門的生成AIが発展的に共存共栄する可能性もあるかもしれません。

 

われわれ行政書士は、日々最新の情報の収集と知識の研鑽し、依頼者に寄り添った最適な回答及び提案をご提供できるように心掛けております。生成AI、 ChatGPTも上手に活用し、皆様のお役に立てるように、今後も努力を続けてまいります。

 

身近な疑問、お困りごとがございましたら、お近くの行政書士へ、是非お気軽にご相談ください。