日本での永住権取得の難しさ

 

このコラムが掲載される10月1日には、緊急事態宣言が解除され、ようやく日常が戻りつつあることかと存じます。とはいえ、引き続き感染リスクに注意しながら、健康を維持していきたいものですね。

 

さて、今回のコラムは、いわゆる「永住権」についてお話いたします。日本人が日本に住むことは、当然の権利として保障されていますが、来日した外国人が日本に住むとなると、かなり高いハードルがあります。ただ、その点について詳細に書いてしまうと、紙面が足りなくなってしまうので、今回は、永住許可(永住権)申請のできる、ある程度日本に長く住んでいる外国人を例題に、ポイントをご紹介いたします。

 

外国人がある程度長く日本に住んでいると、基本的には永住権申請における許可要件の期間に達します。そのような方々の多くは、その時点で、初めて永住権申請について検討されるケースが多いようです。なぜなら、就労系の資格(技術・人文知識・国際業務)で働いていた場合、転職のたびに変更届を出さなければならないからです。

 

その点、永住権には、①就労制限がなくなる、②更新が楽になる、といった2つの大きなメリットがあります。なお、永住権の許可には、1.素行善良であること、2.独立生計要件を満たしていること、3.国益適合要件を満たしていること、といった3つの要件が必要です。一見簡単にクリアできそうな要件ですが、これらをクリアしていることを文書にして住居地を管轄する地方出入国在留管理官署(入管)に申請し、許可を出してもらうためには、かなりの添付書類が必要になります。

 

例えば、入管による国益要件についての定義は、(1)原則10年以上日本に在留していること、そのうち5年は就労資格か居住資格で在留していること、(2)罰金刑や懲役刑などを受けておらず、納税や書類提出などの義務を確実に果たしていること、(3)現在有している在留資格の最長の在留期間をもって在留していること、(4)生活の本拠が日本にあること(出国期間が長いと、理由にもよりますが不利となります)、(5)公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと、といったものです。これらの要件を満たしていることを証明するためには、勤務先の総務や、税務署、警察署などを巡って、一つ一つ添付書類を集めていかなければなりません。これだけでも結構な労力が必要ですが、手間のかかる手続きは、これ以外にもたくさんあります。

 

しかし、ここが歯痒いところなのですが、添付書類を完璧に集めたからといって、必ずしも永住権の許可が下りるわけではありません。許可するか否かの決定は、あくまで入管の裁量となっており、出生地主義ではなく血族主義を採用する日本は、世界的に見て、永住権の申請についてかなり厳しい国なのです。

 

つい先日、私自身もミャンマーの方に、永住権について相談されました。その方は、日本に永住することに従来はこだわっていなかったのですが、国際ニュースでも話題になっているミャンマーの軍事政権が、祖国の政権を掌握し、人権を弾圧する姿を見て、民主化が実現しない限り祖国には戻れないと思い、永住権の申請を決心したそうです。この経験は、外国人が日本に永住するということはどういうことなのか、改めて考えるきっかけになりました。

 

他国の永住権については、また次の機会にお話しさせていただきます。外国人の在留資格申請や永住権申請についてのご相談は、手続きの専門家である行政書士に是非お寄せください。