実は身近な特定商取引法について

 

街路樹も葉を落とし冬の訪れを感じるこのごろ、お変わりなくお過ごしでしょうか。
本日は、特定商取引法についてお話をしたいと思います。

 

この特定商取引法、日常生活ではあまり聞きなれない方も多いと思いますが、私たちの生活の保護や公正な取引に欠かせない、とても身近な法律です。

 

では、特定商取引法とはそもそもどのような法律なのでしょうか。簡単に要約すると、「事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ること」を目的としています。
消費者庁による特定商取引法ガイド(以下、ガイドと呼びます。)には、「訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。」とあります。

 

そして、具体的には取引類型として以下の7種が定められています。

1.訪問販売
事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引のこと。 キャッチセールス、アポイントメントセールスを含みます。
2.通信販売
事業者が新聞、雑誌、インターネット等で広告し、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける取引のこと。 ただし、「電話勧誘販売」に該当するものを除きます。
3.電話勧誘販売
事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引のこと。 電話を一旦切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当します。
4.連鎖販売取引
個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引のこと。
5.特定継続的役務提供
長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。 現在、エステティックサロン、語学教室など7つの役務が対象とされています。
6.業務提供誘引販売取引
「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。
7.訪問購入
事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のこと。

 

上記の取引類型に関し、特定商取引法では事業者に対して消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて、主に以下のような規制を行っています。

 

・氏名等の明示の義務付け
勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げなければいけません。
・不当な勧誘行為の禁止
価格や支払条件等についての嘘の説明をしたり、又は故意に告知しないことや、消費者を困惑させたりする勧誘行為を禁止しています。
・誇大広告等の禁止
広告をする際には、消費者にとって重要な事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を禁止しています。
・書面交付義務
契約締結時等に、重要な事項を記載した書面を交付することを事業者に義務付けています。

 

この内、比較的わかりにくい書面交付義務について、少し解説いたします。
交付すべき書面に記載する内容は、その取引類型によって多少異なるものの、主に以下の事項があります。これらの内容は、消費者が契約内容を正確に理解し、後になってから「知らなかった」という事態を避けるために必要不可欠な情報となっております。
なお、今年2023年の改正では、消費者の事前の承諾を得ること等の一定の条件をクリアすることによって電子媒体での交付が可能になりました。

 

・事業者の正式名称、住所、連絡先
・商品またはサービスの詳細な説明
・価格や支払い方法、支払い期限
・商品の引き渡しやサービスの提供開始の時期
・クーリング・オフ制度の有無とその詳細
・返品やキャンセルに関する条件と手順

 

このなかで、消費者を守る強い味方である「クーリング・オフ制度」について、記載が義務付けられております。
クーリング・オフとは、契約の申込み又は締結後であっても、法律で決められた書面(契約書又は申込書面いずれか早い方)を受け取ってから原則8日以内であれば、解約を無条件で解約できる制度です。また、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては、この解約期限が20日以内に延長されております。
ただし、通信販売には、消費者に購入を熟慮する時間があると考えられていることから、クーリング・オフ制度は適用されません。そのため、契約に返品の特約があるか否かが極めて重要です。とはいえ、事業者による返品特約が定められていない場合であっても、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば、消費者が送料を負担することで返品することができることとされております。
なお、「クーリング・オフの権利を行使しない」など、消費者が一方的に不利となるクーリング・オフを適用除外する特約は無効とされています。

 

特定商取引法に違反した事業者は、消費者庁等による指導や罰則を受ける可能性があります。これには違反に応じた罰金や、場合によっては業務停止命令など、事業の継続に影響を及ぼす重大な措置が含まれることがあります。したがって、適切な書面交付を含めた特定商取引法の遵守は、事業者の信頼性とブランドイメージを保つ上でも極めて重要です。
交付義務に違反した場合、刑事罰では最長で6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはそれらの併科の対象となり、場合によっては営業停止といった行政処分が下されることもあります。

 

特定商取引法ガイド執行状況のページでは、消費者庁、地方経済産業局及び都道府県における特定商取引法に基づく行政処分について、事業者名や処分内容などの情報が、年度別に掲載されております。例えば2022年度は94件について、何らかの処分がなされております。また、2023年度の処分状況に関しても随時更新されております。ご興味がございましたら、下記のリンクもご参照ください。

 

特定商取引法ガイド 執行状況
https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/

 

今回ご紹介した、特定商取引法も含め、皆様の身近な生活に関する法律は随時改正がされております。暮らしの法律に関するご相談がございましたら、お近くの行政書士へ是非お気軽にご相談ください。