共同親権と法定養育費

 

新年あけましておめでとうございます。皆様にとって幸多き一年となりますように、心よりお祈り申し上げます。
今年の干支(十干十二支)は「丙午(ひのえうま)」で、十二支では「午(うま)」の年にあたります。丙午は60年に一度回ってくる年で、強いエネルギーで道を切り開く縁起の良い年とされ、午の躍動感や力強さ、前進を象徴して物事が順調に進む年と言われます。

 

さて、今年最初のコラムは、一昨年5月に成立し本年4月1日に施行が決定した『共同親権と法定養育費』についてお話しします。『親権と養育費』とは父母の離婚後の子どもの養育に関するルールですが、改正により何が変わるのでしょうか。
改正前の民法では、父母の婚姻中は父母双方が親権者ですが、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした。これが改正により、離婚後は共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。つまり、親権者の定めの選択肢が広がります。

 

【親権者の定めかた】
<協議離婚の場合>
父母が、親権者を父母双方(共同親権)とするか、一方(単独親権)とするのかを協議により定めます。

 

<父母の協議が調わない場合>
家庭裁判所に親権調停の申し立てを行います。調停では、家庭裁判所は父と母それぞれから意見を聴き、父母と子どもとの関係や、父と母との関係など様々な事情を考慮した上で、子どもの意見や意思、人格を尊重し、子どもの利益の観点から親権者を父母双方とするか、一方とするのかを定めます。
ただし、次の様な場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。

●虐待のおそれがあると認められるとき
●DV のおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。(殴る・蹴る等身体に対する暴力に限定されず、心身に有害な影響を及ぼす言動なども含まれます。)
●その他共同親権を定めることで子どもの利益を害すると認められるとき

 

<調停が不成立の場合>
離婚訴訟を提起して、離婚のなかで親権についても裁判所の判断を仰ぎます。(日本の法律では離婚は調停前置主義という定めがあるため、まず調停を行わないと訴訟はできません。)

 

【親権者の変更】
改正前に既に親権者を父母のどちらか一方に定めて離婚している場合でも、改正後に親権者の変更は可能です。
(改正民法819条6項抜粋)
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって親権者を変更することができる。
改正前との違いは、子ども自身が請求できるようになります。そして現行法では、一方から他方への親権変更だけであったものが、
① 一方の単独親権→他方の単独親権への変更
② 一方の単独親権→共同親権への変更
③ 共同親権→単独親権への変更
ができるようになります。

 

【親権の行使方法・父母双方が親権者である場合(共同親権)】
① 親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。
② 次のような場合は、親権の単独行使ができます。
●監護教育に関する日常の行為をするとき
●子どもの利益のため急迫の事情があるとき
③ 特定の事項について、家庭裁判所の手続で親権行使を定めることができます。

 

<監護教育に関する日常の行為とは>
日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、子どもに重大な影響を与えないものをいいます。個別具体的な事情によりますが、例えば日常の行為に当たる例、当たらない例としては、次のような場合があります。

 

<日常の行為に当たる例(単独行使可)>
●食事や服装の決定
●短期間の観光目的での旅行
●心身に重大な影響を与えない医療行為の決定
●通常のワクチンの接種
●習い事
●高校生の放課後アルバイトの許可

 

<日常の行為に当たらない例(共同行使)>
●子どもの転居
●進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む)
●心身に重大な影響を与える医療行為の決定
●財産の管理(預金口座の開設など)

 

<子どもの利益のため急迫の事情があるときとは>
父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、子どもの利益を害するおそれがある場合をいいます。急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。
個別具体的な事情によりますが、急迫の事情の例としては次のような場合があります。
●DVや虐待からの避難(子どもの転居などを含む)をする必要がある場合
●子どもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
●入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合    など

 

次に【法定養育費】についてお話します。
これまでの民法では、父母の協議や家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費の請求をすることができませんでした。また、取り決めがあった場合でも支払われないケースが多くありました。そのため今回の改正法では、養育費の取り決めの実効性を高めるために、離婚の時に養育費の取り決めをしていなくとも、離婚の時から引き続き子どもの監護を主として行う父母は、他方に対して、【法定養育費】(原則、子ども一人につき月額2万円)を請求できるようになります。更に改正法では、養育費債権に【先取特権】と呼ばれる優先権が付与されるため、離婚の事実や監護の状況など、養育費請求権の発生を示す資料があれば、従来必要であった債務名義(公正証書・調停調書・審判書など)がなくても差押えを申し立てることができるようになります。

 

以上が今年の4月1日から施行される【共同親権と法定養育費】についての概要になります。共同親権と法定養育費は改正家族法の各論で、このほかにも改正されるところが有りますが、ここでは全てを説明できません。改正法について、もっと詳しく知りたい方は法務省のホームページをご覧ください。調停・審判の手続等は最寄りの家庭裁判所、養育費については養育費等相談支援センターへお問い合わせください。

 

行政書士は離婚裁判のお手伝いはできませんが、公正証書による協議離婚の内容や親権、養育費の取り決めについてのご相談等はお受けできますので、お気軽に行政書士会湘南支部までお問い合わせください。

神奈川県行政書士会湘南支部は皆様のお役に立つため、より一層の研鑽を重ねて参ります。本年も本コラムをご愛読いただけますよう何卒宜しくお願い申し上げます。