インバウンドと行政書士

 

現在、このコロナ禍がなければオリンピックが開催され、多くの外国人旅行者がきっと日本を訪れていたことでしょう。一日も早い事態の終息を願っております。

さて、昨今、外国人による訪日旅行や訪日外国人旅行者自身のことを、新聞や雑誌などで「インバウンド」と呼ぶことが多くなっています。過去には流行語大賞の候補にもあがっていましたが、しっかりとその意味を理解している人は少ないのではないでしょうか。

「インバウンド」は、英語で「本国行きの」「帰航の」を意味する形容詞「inbound」に由来します。かつて、訪日旅行は「旅行・観光」を意味する「touring(ツーリング)」と合わせて「インバウンド・ツーリング」と呼ばれていましたが、それが省略され、今では訪日外国人旅行者と共に「インバウンド」と呼ばれるようになりました。ちなみに、その対義語の「アウトバウンド(outbound)」は、基本的には「外国行きの」という意味ですが、日本では「日本人の海外旅行」という意味でも使われます。

5年前の統計ですが、2015年のインバウンドの数は約1973万人でした。当時の日本の人口は1億2650万人超ですが、その人口に対して15%以上にものぼる人数が訪日していた計算になります。

それでは、そのインバウンドの方々全員が持っているものはなんだと思いますか?

それは「パスポート(旅券)」です。通常、国や地域を出入国ないし出入域する際には、その者の身分や国籍を証明するために「渡航文書(条約によっては旅行文書)」の提示が求められますが、パスポートは最も一般的な渡航文書にあたります。また、渡航先の国に対しては、所持者の人身保護を要請する側面もあるので、インバウンドの方々にとっては、外国である日本において、自らを守るためになくてはならない大事な証明書でもあるのです。

このパスポートには、出入国証印が押されるだけでなく、観光ビザ(日本人は、30日間の観光ならノービザで、ある程度の国に入国できます)や外国で働くための就労ビザなども貼付されます。ただ、日本の就労ビザの申請手続きは厳格かつ複雑な手続きを要するため、外国人が就労ビザを得るのは大変です。そこで、関係者の負担を少しでも軽くしようと、多くの行政書士がビザ取得の業務に携わり、日々尽力しております。

また、インバウンドに関連して行政書士が扱う業務には、外国人向けに限らず、日本人向けのものもあります。例えば、東京オリンピック・パラリンピック開催の際に予想される、ホテルの客室不足などのインバウンド宿泊需要に応えるために、2018年6月15日に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)に関する業務です。このいわゆる民泊に関する申請業務においても、多くの行政書士が活躍しています。

このように、行政書士はインバウンドに関連する様々なご相談に対応しておりますので、外国人の方のみならず日本人の方も、是非お気軽にご相談をいただけると幸いです。

最後に、来年にはコロナ禍が解消され、オリンピック・パラリンピックが無事開催されることをお祈りいたします。