「障害者差別解消法」と「へイトスピーチ対策法」

 

本年、平成28年に入って、日本の社会をより一層、公平で平等な社会に導くための法律が、立て続けに2つ施行されました。

一つは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年6月19日成立、同26日公布。平成28年4月1日施行。以下、「障害者差別解消法」と呼びます。)です。
もう一つは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(平成28年5月24日可決、成立。6月3日施行。以下、「へイトスピーチ対策法」と呼びます。)です。

まず、一つ目の「障害者差別解消法」ですが、二つの大きな骨子があります。
不当な差別的取り扱いの禁止(法的義務で禁止)と、合理的配慮の提供を求める事(国・自治体は法的義務、民間事業者は努力義務)です。
簡単に言えば、これまで飲食店に入るのを断られる、銀行でATMの操作を手伝って欲しいと伝えても対応してもらえない等の差別を国・自治体レベルでは法律的に禁止し、民間では差別をなくしていくように努力していきましょうと言う事です。

我々、行政書士との関わりは、主に、法人設立や企業法務、企業コンサルティング等で関係してくると思われます。
自分自身もですが、民間事業者や企業の方に対して、法律の専門家として、障害者の差別の解消に向けた努力と、障害者の方々にきちんと対応していけば、事業者の利益につながっていく事を、説明していく必要があると思います。

又、この法律とは直接的には関係はありませんが、我々、行政書士会全体では、障害者の方々、そして認知症や高齢者の方々も含めた、法律的に弱い立場の方々を成年後見という形で、サポートしていくための「コスモス」という団体を立ち上げ、努力している最中にあります。

次に、二つ目の「ヘイトスピーチ対策法」は、直接的には、行政書士の業務には関係はありませんが、我々、行政書士の中には、申請取次行政書士というものがあります。
これは、日本に在留している外国人の方々に代わって、いわゆる在留ビザや永住の申請等の国際業務を行なう行政書士が所持しています。

そういった業務をしている行政書士は、外国人の方々と接する機会も、大変、多くなってきます。
我が神奈川にも、多くの外国人が住んでいる、横浜中華街、川崎の桜本コリアンタウンがあり、業務でそちらに出向いた際、ヘイトスピーチが激しくなっていった平成26年頃には、実際に目のあたりにした行政書士もたくさんいたと思われます。
この法律が施行される事で、外国人の方々も、そして直接、関わっている行政書士達も、少しは心が落ち着かれたのではないかと思います。

しかし、この対策法には、課題も少なからず残っています。例えば、どのような実効性を持たせて、ヘイトスピーチを無くすのか、公園や道路の使用に対してもこの法律をもとに判断できるか等です。
私たちは、これからも議論を続け、声を上げていく必要があると感じます。

終わりに、4年後には、この日本で、これまで類を見ない数の外国人が訪日するオリンピックが、そして、世界中の体に障害を持った選手達がやって来るパラリンピックが行われます。
この2つの法律共、オリンピック・パラリンピックとは無関係ではないように思われます。
4年後、この日本社会が、今よりもさらに差別がなく、より公平で平等な社会になるよう努力し、多くの外国人と障害者の方々を、笑顔で迎えられることを願ってやみません。