「相続土地国庫帰属制度」について

 

行楽やスポーツ、実りを楽しむ季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

今月のコラムでは、本年4月27日より開始された「相続土地国庫帰属制度」(以下、「本制度」といいます)についてご紹介いたします。

 

昨今、相続により土地を取得したものの、遠方に住んでいるため土地利用のニーズがない、または土地の管理に手間ひまがかかり負担も大きい、などの理由で土地を手放したいと考える方が増えております。このまま土地が管理されずに放置され、将来的に「所有者不明土地」となってしまうことを予防する方策として、本制度は創設されました。

 

ちなみに「所有者不明土地」とは、相続登記が行われないことなどを原因とする、

  1. 不動産登記等により所有者が直ちに判明しない土地
  2. 所有者が判明しても連絡がつかない土地

のことを指します。

 

全国の所有者不明土地が占める割合は九州本島の大きさに匹敵するともいわれ、現在大きな問題となっております。不動産登記制度の見直しとともに、本制度が活用されることにより、所有者不明土地の増加の抑制に一定の効果が期待されております。

 

それでは、ここからは本制度の概要についてご説明いたします。

 

本制度は、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、その土地を手放したいときに、①法務大臣(窓口は法務局)に申請し、②要件審査がなされ、③承認後に決められた負担金を納付すると、土地の所有権が国庫に帰属するというものです。

 

本制度の開始前に土地を相続していた方でも申請可能ですが、売買などによって任意に土地を取得した方や、相続等により土地を取得できない法人は本制度の利用対象外となっております。また、土地が共有地である場合には、相続や遺贈によって持分を取得した相続人を含む共有者全員で申請する必要があります。

 

では、どんな土地でも国が引き取ってくれるのでしょうか。この点、国有地として引き取ってもらえる土地には要件があり、申請後、法務局職員などによる書面審査や実地調査が行われます。建物、工作物、車両等がある土地や土壌汚染や埋没物がある土地など、通常の管理または処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地については対象外となっております。

 

また、本制度の利用に際しては、手続きの過程で一定の費用がかかります。まず、申請時に審査手数料(土地一筆につき1万4千円)を納付いたします。そして、国庫への帰属について承認を受けた場合、通知から30日以内に負担金(10年分の土地管理費相当額)を納付する必要があります。

 

負担金の金額については、承認を受けた土地がどのような種目に該当するか、そしてどのような区域に属しているかによって決定いたします。一部の市街地の宅地、一部の市街地及び農用地区域等の田畑、森林は面積に応じ算定いたしますが、その他の宅地、田畑、雑種地、原野などは面積にかかわらず、20万円となっております。

 

このように、本制度は申請から引き渡しまでに時間や手間がかかるうえ、手数料や負担金もかかりますが、買い手がつかない土地や山林、売買に制約がある農地でも対象となりますので、土地の管理負担軽減のため、今後積極的に活用が検討されるケースも多いものと見込まれております。

 

また、本制度を利用せずに、相続放棄をして最終的に相続財産を国庫に帰属させる場合と比較しても、以下の2点のメリットがあります。

まず1点目は、国庫に帰属させる財産を、不要な土地に限定できることです。相続放棄を行う場合、資産および負債等すべての相続財産を放棄する必要があり、不要な土地や負債のみを放棄することはできません。この点、本制度では、不要な土地のみを国庫に帰属させることが可能になります。

2点目は期限の制限です。相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に行わなければならない(民法第915条参照)のですが、本制度ではそのような期間の制限はなく、例えば数十年前に相続した土地についても、国庫に帰属させることが可能です。

 

本制度や所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しについて、さらに詳しく知りたい方は、以下の法務局特設ページをご参照ください。

 

・相続土地国庫帰属制度について

・所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し

 

われわれ行政書士は、本制度の申請書類の作成について、業務として代行することができる専門の国家資格者です。「相続土地国庫帰属制度」の活用をご検討の際は、お近くの行政書士に是非お気軽にご相談ください。