春らしい陽気につつまれる日が増えてきました。
まだまだ新型コロナウイルス感染症が私たちの生活に多くの影響を及ぼし続けていますが、一日も早く事態が収束することを願ってやみません。引き続き、体調管理に気を付けてまいりましょう。
さて今回は、約40年ぶりとなる民法(相続関係)改正の大きな柱のひとつであり、この4月1日からスタートする「配偶者の居住権」についてご紹介したいと思います。
(相続法改正については以下の記事もご覧ください。
①「遺言書」について/②「遺産分割」について/③「遺留分」について)
「配偶者の居住権」とは、夫や妻がなくなってしまい、相続が発生したときに、その配偶者が、居住建物(自宅)の所有権を取得しなくても、そのまま住み続けることができる権利です。
これまでは、亡くなった方(被相続人といいます)が残した遺言や、配偶者を含めた相続人同士による遺産分割協議の内容によっては、残された配偶者が被相続人の所有していた自宅に、そのまま住み続けることができなくなってしまうことがありました。
また、たとえ自宅の所有権を取得できたとしても、建物が思ったより高い金額で評価されてしまい、自分の相続する財産額の大半を占めてしまった結果、それ以外の現預金などの財産を十分に取得することができず、老後の生活資金が足りなくなってしまうこともありました。
そこで、残された配偶者が住み慣れた自宅に住み続けることを保障しつつ、老後の生活資金を取得しやすくするために創設された制度が、「配偶者の居住権」です。
「配偶者の居住権」には、次の2種類があります。
1つ目は、【配偶者短期居住権】といって、配偶者が被相続人と共に暮らしていた自宅の所有権が、他の相続人や第三者の名義になってしまった場合でも、一定期間そのまま自宅に住み続けられる権利です。被相続人の死後、最低6か月間は住み続けることができるので、その間に次の引っ越し先を探すことができます。
この【配偶者短期居住権】が成立するためには、配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたこと」が必要です。
2つ目は、【配偶者居住権】といって、遺産分割によって第三者などが自宅を所有することになっても、原則として、一生涯自宅に住み続けられる権利です。この居住権は配偶者に寄り添う権利として位置づけられるので、所有権とは別の権利として考えられます。
【配偶者居住権】を取得するためには、「配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していたこと」及び、遺産分割協議または遺言書による遺贈が必要です。通常は終身(配偶者が亡くなるまで)の権利となりますが、存続期間を定めることもできます。
また、【配偶者居住権】には財産的価値があり、通常の所有権よりもその金額が低めに評価されますので、預貯金などの他の遺産も相続しやすくなるというメリットがあります。
夫や妻が亡くなったあとも、その配偶者が住み慣れた家で暮らし続けたいと思うのはごく自然なことでしょう。遺言書を残しておくことによって、配偶者が老後も安心して自宅で暮らしていけるように準備することができます。
行政書士は遺言書や遺産分割協議書の作成を業務としてお手伝いしております。「配偶者の居住権」取得にご興味がございましたら、ぜひお近くの行政書士にお気軽にご相談ください。