穏やかな陽気が気持ちの良い季節となりました。
4月を迎え、新生活が始まった方も多いことと思います。
皆様のこれからの益々のご活躍を、神奈川県行政書士会湘南支部一同、お祈り申し上げます。
さて、今回のコラムでは、備えておけば役に立つ「財産管理委任契約」についてご紹介いたします。
皆様はご自身や身近な方の老後をお考えになられたとき、「体力が衰えたら、いままでどおり自分で財産管理ができるだろうか」、「病気やケガなどで身体が思うように動かなくなったらどうすればいいのだろうか」などと不安を感じられたことはないでしょうか?
このようなときには、身近な親戚や知人に、手続きを代わりにお願いすることが真っ先に考えられるかと思いますが、その場合は、原則として手続き1件ごとに委任状を書く必要があります。しかし、身体が思うように動かないときには、いちいち委任状を書くことが難しいこともあるかもしれません。また、近くに頼める親戚や知人がいないという方もいらっしゃると思います。
そのような場面で活用できるのが、財産管理委任契約です。
財産管理委任契約とは、特定の人に契約期間を定めて代理人になってもらい、財産の管理や療養看護に関わる生活上の法律行為について、あらかじめお願いする内容を決めておく契約のことであり、任意代理契約と呼ばれることもあります。
この契約を結んでおけば、その都度委任状を書く手間を省くことができます。
財産管理委任契約の内容は、代理人との合意があれば自由に決めることができ、代理人も自由に選ぶことができます。
たとえば、つぎのような内容を委任することができます。
・銀行からの預金引き出しや、公共料金の支払い
・病院や介護サービスなどの費用の支払いや手続き
・要介護認定の申請
・身の回りの物品の購入
・所有している不動産の家賃収入の管理など
老後の財産管理の方法としては任意後見契約もございますが、任意後見契約は認知症などで判断能力が低下してから、はじめて効力を生じる契約となりますので、判断能力があるうちは任意後見人に財産管理などを依頼することはできません。また、任意後見契約の効力を発生させるためには家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行う必要があり、審判が出るまでに数か月かかってしまうこともあります。
そのため、財産管理委任契約と同時に、判断能力の低下に備えて任意後見契約を締結しておくと、いざというときにスムーズに任意後見契約に移行することが可能になり、より万全な備えを期待することができます。加えて、お近くに身寄りがいらっしゃらず、亡くなった後の事務処理についての不安がある方は、死後事務委任契約も同時に結んでおくと、より効果的です。
財産管理委任契約には様式の制限はありませんが、公証役場で公正証書にしておくと、様々な場面で信頼性が高まり、手続きがスムーズに進むことが期待できるので、お勧めいたします。
慣れない公証役場での手続きが不安という方は、お近くの行政書士までぜひお気軽にご相談ください。わたしたち行政書士は、契約書の作成から公正証書作成の手続きまで、皆様の願いを実現するお手伝いをさせていただきます。