謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
昨年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、世界全体がこれまで経験したことのないような厳しい一年になりました。本年はコロナ禍を乗り越え、明るく笑顔に満ちた年にしたいものです。
われわれ行政書士も、少しでも地域の皆さまのお力になれるよう一層研鑽に励むとともに、皆さまのさらなるご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
さて、令和3年初のコラムは、空き家問題に関する情報を提供させていただきます。
空き家とは、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」及び国土交通省の指針によれば、「1年以上人が住んでいない、または使われていない家」とされています。
近年、全国的にこの空き家が増加しており、物件の所有者がわからない、所有者が遠方に住んでいるなど様々な理由で適切な管理が行われず、放置されていることが大きな問題となっています。皆さまも新聞・テレビ・インターネットなどで、このようなニュースを見聞きする機会も多いかと思います。
政府もこの問題については調査を進めており、令和2年12月16日付けにて、「令和元年度空き家所有者実態調査」が国土交通省ホームページ内に公表・掲載されています。
この調査は、全国の空き家について利用状況、管理実態などを把握し、空き家に関する基礎資料を得ることを目的とし、行われています。ご興味がございましたら、是非ご確認ください。
では、どのようなことがきっかけで、空き家を所有することになってしまうのでしょうか。空き家の取得経緯について、上記調査結果を見ると「相続による取得」が全体の54.6%となっています。
この「相続による取得」には、相続人間の遺産分割協議の結果、対象物件を引き継がれた方が住まずに空き家になったケース、相続人間の協議がまとまらず名義変更ができないままのケースなど、放置されはじめた経緯は様々です。
そして、空き家を放置していることで次のような問題が発生いたします。
・老朽化の問題・・・屋根や外壁の落下、建物の倒壊、台風被害など
・防犯上の問題・・・放火の誘発、不審者の侵入、ゴミの不法投棄など
・衛生上の問題・・・野良猫(野生動物)の住処、害虫の発生など
・近隣との問題・・・樹木の隣地への越境、雑草の繁茂、落葉の飛散、景観の悪化な
ど空き家を放置したことで他人に損害を与えてしまうと、所有者責任を問われ、損害賠償を求められることもあります。
さらに、空き家が次のような状態の方は特に注意が必要です。市町村から「特定空家等」に指定される可能性があります。
・そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理がされていないことによって著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
市町村は、このような「特定空き家等」の現状把握や措置を検討するため、その物件に立入調査をすることができます。そして、調査の結果、所有者へ必要な措置を助言・指導・勧告・命令することができ、それに従わない場合には、強制撤去(行政代執行)もできる強い権限をもっています。
市町村から勧告を受けると、その土地は「住宅用地の特例措置」の適用外となり、固定資産税などが増額されてしまうこともあります。また、命令に違反した場合、50万円以下の過料が科されることもあります。
全国的に空き家が問題となっていることから、一度空き家になると、その後の解決が容易でないことがわかります。各市町村でも、発生した空き家問題を解決できるよう、無料相談だけでなく、空き家利活用マッチング制度などにも取り組んでいます。
例えば、藤沢市では、空き家移動相談会を定期的に開催しており、空き家利活用などの相談に対応しております。さらには、令和2年度には藤沢市空家等対策協議会も発足され、空き家問題の解決に向けた積極的な取り組みを行っております。われわれ湘南支部も、この移動相談会や対策協議会に参画し、自治体と足並みをそろえて協働しております。
それでは、空き家にしないためには、将来に向けてどのような対策が効果的でしょうか。
ここでは、空き家予防策として、代表的なものを2点ご紹介いたします。
①【遺言を活用】
遺言を上手に活用することで、将来空き家になる可能性の高い物件の承継者(自分
の次に住む人、または使う人)をあらかじめ指定することや、自分が亡くなった後そ
の物件を売却し、金銭に換えた後に承継するように決めておくことも可能です。
②【任意後見制度を活用】
物件の所有者が老人ホームへ入居したことをきっかけに、空き家となってしまうケ
ースもあります。ご自身が認知症などになったときに備え、あらかじめ支援者を定め
ておくことで、物件が放置されることを未然に防ぐことができます。空き家の管理や
、必要に応じて、将来的に物件を売却してもらうように決めておくことも可能です。
ちなみに、上記でご紹介した遺言書や任意後見契約書の起案は、行政書士が専門業務として取り扱っております。作成にお困りの際は、お近くの行政書士に是非お気軽にご相談ください。
本年も皆さまの生活に寄り添い、そして事業のパートナーとして貢献できるよう、支部会員一同努力を重ねて参ります。
本年も神奈川県行政書士会湘南支部をどうぞよろしくお願い申し上げます。