相続法 大幅改正の方針

 

 社会の高齢化に伴い、「相続・遺言」についての一般の関心が高まっているようです。
関連する記事や書籍、セミナーの案内などを目にする機会は年々増え、行政書士が
相談を受ける機会も増えています。
 しかし、根拠法である民法の相続法規定は、時代状況の変化にうまく対応できなくなって
いるようです。平成25年9月4日には非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の半分と定めた
民法900条4号の規定が、法の下の平等を定める憲法14条に違反していると最高裁決定で
判断され、その後の法改正で削除されました。
 そうした状況を踏まえて、法務省の法制審議会は今年の6月21日に「民法(相続関係)等
の改正に関する中間試案」を発表。法務省は、①配偶者②寄与分③遺留分④自筆証書遺言
⑤預貯金に関する事項を中心に相続法を大幅に改正する方針です。そこで今回は、試案の
骨子についてご紹介します。
 まず、①配偶者に関する事項では、新たに配偶者の居住権に関する規定を設けることに
しました。居住権には短期居住権と長期居住権の2種類があります。
 短期居住権は、被相続人の死亡後遺産分割が終了するまでの短期間に配偶者が居宅に
居住する権利です。現行法下でもその期間内に配偶者は居住できるのですが、明確な権利は
法定されていません。
 長期居住権は、遺産分割終了後も居住できる権利です。短期居住権とは異なり無条件には
認められず、遺言か遺産分割協議による合意があったときに認められます。その他にも、
配偶者の貢献に応じた遺産分割の制度が導入される方針です。
 次に、②寄与分について説明します。寄与分とは、相続財産の増加に貢献(寄与)した
相続人の相続分のうち、他の相続人の分よりも優遇された部分のことです。寄与分は、
現行法下ではよほどの事情がない限り認められないことから、被相続人の療養看護について
相続人間で顕著な差がある場合に遺産分割協議または家庭裁判所の審判で認められるように
します。その他にも、相続人以外の者にその貢献に応じた寄与分を認めることにしました。
 ③遺留分は、相続財産のうち民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる部分
です。現行法下では遺留分の侵害がある場合、それを排除するための「減殺請求」の時点で、
財産の所有権が遺言によって財産を受け取る人から遺留分の権利を持つ人に移転するので、
事業承継などの場面で関係者が困難に直面することがあります。そこで、権利者は遺留分の
対価を請求できるだけにし、その支払い方法は協議によることにしました。また、遺留分の
算定方法も見直す方針です。
 続いて、遺言者が直筆で書く④自筆証書遺言についてですが、不動産や預貯金の表示などの
財産の特定に関する事項は、パソコンなどの自筆以外の手段で作成できるようにします。
また、遺言書を公的機関で保管できるようにして、相続人や遺言執行者が相続開始後に
遺言書の保管の有無を確認できるようにする方針です。
 最後に、⑤預貯金については遺産分割の対象とし、可分債権で遺産分割の対象ではないと
されている現状を改めることにしました。
 以上述べてきたように、相続・遺言については今後大幅な法制度の改正が予定されています
が、行政書士はそれに対応できる専門家です。お気軽にご相談ください。