未成年の子どもを持つ方におすすめ! 「遺言で出来るこんなこと、あんなこと」

 

 師走に入り、皆さまお忙しくお過ごしのことと存じます。
 新しい年を新しい気持ちで迎えるために、大掃除をしたり、身の回りの整理をしようという気持ちになるのは各国共通なのでしょうか?

 身の回りの整理と言えば、このサイトをご覧の方は「遺言書」を思い浮かべられる方も多いでしょう。
 湘南支部が行っている相談会でも、実際にお書きになった遺言書をお持ちになり、内容を確認してほしいというご相談が多く寄せられています。

 以前は、「遺言書を書くほど財産がないから必要ないわ」という声をよく耳にしましたが、最近は、財産について相続人間で話すのは気が引けるだろうし、遺言書があると、それに従って手続きを進めればいいからと、全体的に平等な割合で相続させるとした内容でも、遺言書を作られる方が増えてきています。

 遺言を書く方が増えてきていることは、相談会でも実務でも感じられますが、比較的若い方で遺言書を書こうという方はまだまだ少ないようです。
 ですが、先の長い若い方だからこそ遺言書をおすすめしたいケースがございます。

 ケース1 未成年の子を持つ夫婦の夫が亡くなり、全財産を妻に単独相続させたい場合

 法定相続人は妻と子、法定相続分は妻が2分の1、子が2分の1となります。
 法定相続分で相続するのであれば、さほど問題ではないのですが、自宅、預貯金をまとめて管理するために妻の単独相続とする場合は、たとえ妻が子の財産を使い込む意思がなくても「利益相反の関係」となるので、裁判所に未成年の子の「特別代理人」の選任申立てが必要となり、選任された特別代理人と遺産分割協議を行うようになります。
 申立ての費用、特別代理人にも報酬が必要となる場合は、費用が嵩みます。
 このようなケースに、「全ての財産を妻に相続させる」という内容の遺言書があれば、選任の申立てをせずに手続きを進めることが出来ます。

 ケース2 未成年の子を持つ親が離婚し、自分が親権者となっている場合

 もし、ご自分に何かあったときに、この子はどうなるのだろうかとお考えになることがあろうかと思います。
 未成年者の親権者が亡くなった場合、親権者が不在となりますので、未成年の子について「未成年後見」が開始します。(民法第838条第1号)
 未成年後見人は、未成年者の法定代理人であり、未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行います。
 未成年者の銀行の手続きに祖父や祖母が行っても、未成年者の財産管理は未成年後見人が行いますので、受け付けていただけません。
 認知症等で判断能力が低下し財産管理が難しくなった方のために「法定後見」の制度があることは知られていますが、未成年者を守るため「未成年後見人」の制度もあります。

 未成年後見人は、「遺言で指定する方法(民法第839条第1項)」と、「一定の者から家庭裁判所に選任を請求する方法(民法第840条」で選任されます。
 色々なご事情で離婚されたのでしょうから、前の配偶者に親権を持たれたくないという方もいらっしゃるでしょう。
 前の配偶者も、親権者変更の申立て(民法第819条第6項)ができるので、裁判所が子の福祉を考え、前の配偶者が適任と判断されることもありますが、遺言書があれば、間断なく未成年後見人として仕事が始められますので、子を守る意味でも意義のあることでしょう。(未成年後見人は、就任の日(親権者が亡くなった日)から10日以内に「未成年後見開始の届出」をする必要があります(戸籍法第81条))

 親や、兄弟姉妹等安心して任せられる人に指定しておくことで、自分亡き後の子の将来の不安も多少は薄れるのではないでしょうか。

 このように遺言書は財産のことだけでなく、身分関係についても定めることができ、上記以外にも、遺言で出来ることはまだまだ沢山あります。

 私たち行政書士は、皆さまのお役に立てることが1番の喜びであります。

 お読みいただいている方だけでなく、周囲のお困りの方、将来困るかも知れない方に声を掛けていただいて、その方々の何かのきっかけとなれば幸いです。

 湘南支部では、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町で毎月1回無料相談を実施しておりますので、お若い方も是非、足をお運びください。お待ちしております。

 それでは皆さま、よいお年をお迎えください。