介護タクシーを開業するには

 

初夏のような陽気が心地良い季節となりました。これから迎える梅雨に負けずに、元気に乗り切りたいものですね。

 

さて、今回は昨今の高齢化社会に欠かせない「介護タクシー」についてご紹介したいと思います。皆様も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 

介護タクシーとは、主に身体の不自由な方や高齢者、要介護者を対象とした、車いすやストレッチャーのまま乗車できるような設備を整えたタクシーです。通院、買い物、施設間の移動など、日常生活における移動をサポートするのが主な役割です。運転手はヘルパーの資格などを持ち、乗降の介助なども行います。

 

高齢化社会の進行とともに、移動支援サービスのニーズが高まる中、介護タクシーの需要は年々増加しています。ご自身で開業しようと考える方も増えていますが、介護タクシーは一般のタクシーとは異なり、特有の制度や許可申請が必要です。

 

介護タクシー事業を始めるには、一般的に以下のような流れになります。

事業計画の作成
開業にあたっては、運行エリア、ターゲット顧客、運賃、収支見込みなどを明確にした事業計画書の作成が必要です。車両や営業所確保のための開業資金も必要ですので、補助金の活用も検討すると良いでしょう。

  1. 車両と設備の準備
    福祉車両(リフト付きやスロープ付き)を用意し、必要に応じて車いす固定装置や乗降用の備品も準備します。
  2. 必要な資格の取得
    運転手として必要なのは普通自動車二種免許です。また、介助が必要な場面もあるため、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などの資格も必要です。
  3. 営業所・車庫の確保
    営業所と車庫の設置も必要で、車庫は申請する運輸支局の管轄エリア内にあることが求められます。
  4. 運輸局への許可申請
    介護タクシーは「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」として国土交通省の地方運輸局に申請を行い、許可を受けなければ運行できません。これは「一般タクシー」ではなく「特定の利用者に限定した運送」として扱われます。申請者には法令試験が課せられます。
  5. 審査基準に基づく審査、許可処分
    許可証が交付されるまでの期間は2か月程度とされていますが、申請書類に不備があった場合はそれ以上の時間を要することがあります。

 

開業後の運営管理
許可取得後は、安全運行管理や定期点検、利用者対応など、一般のタクシー以上に細やかな運営が求められます。

 

許可を取る際の注意点として、事業者が福祉輸送に限定された運送を行うことが条件になります。乗客は「介護保険の要介護認定者」や身体障がい者に限られるため、健常者を乗せて運賃を取ることはできません。

 

申請に必要な書類としては、事業計画書、運行計画、営業所・車庫の図面、車両写真、資格証明書などがあります。地方自治体によっては助成制度もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

 

また、介護タクシーと混同しやすいものとして「福祉タクシー」と呼ばれるものもありますが、次のような明確な違いがあります。

 

  • 介護タクシー:国土交通省の許可を得た事業者が運行する、介助付きのタクシー。福祉輸送限定の許可を受けており、介護が必要な人の移動支援が主目的です。
  • 福祉タクシー:一部自治体や民間団体が運行するもので、介護タクシーのような法的な許可を必要とせず、介助が不要な人でも利用できるケースがあります。運転手に介護資格があるとは限らず、設備も簡易なことが多いです。

 

介護タクシーは加速する高齢化社会にとって非常に価値のある事業です。介護タクシー事業を始めたいとお考えの方は、福祉タクシーとの違いを理解し、適切な準備を行うことで、安心・安全なサービスの提供が可能になるでしょう。

 

介護タクシーの開業には、専門的な許可申請や設備、資格が求められます。事業計画書の作成や資金調達、行政手続きでお困りの際は、許認可申請の専門家である行政書士へぜひお気軽にご相談ください。