猛烈な暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏休みやお盆休みなどで、帰省やお墓参りをされる方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、最近よく耳にするようになった「墓じまい」について取り上げたいと思います。「墓じまい」という言葉は、一説には霊園事業を手掛ける会社の社長が2014年に著書で使って以来、マスコミなどで取り上げられるようになり、一気に一般に浸透したと言われています。非常にわかりやすく万人受けしそうな表現なので、今回のコラムでも使わせていただきますが、寺院や古くからの石屋さんの中にはこの新しい表現を快く思わない方もいらっしゃいますので、場合によっては使い方に少し注意が必要です。
さて、この「墓じまい」とは、代々のお墓をやむなく閉じるために、墓石を撤去し、墓所を更地にして、お寺に使用権を返還することです。また、お墓に納められているご遺骨を取り出して別の場所に納骨したり、散骨などのご供養を行ったりしますので、「改葬許可申請」という行政手続きが必要になります。
それでは、お墓を継ぐ人がいない、故郷から離れて暮らしていてお墓参りがなかなかできない、といった事情で、「墓じまい」を検討される場合、具体的にどのように進めればよいでしょうか。
一般的には次のような流れになります。
① 親族と相談して「墓じまい」の同意を得る
② 墓地管理者に相談をする
③ 新しい納骨先や供養方法を決める
④ 改葬許可申請を行う
⑤ 閉眼供養、遺骨の取り出しを行う
⑥ 墓石を撤去し、更地にして返還する
⑦ 納骨先へ改葬許可証を提出する
⑧ ご遺骨を新しい納骨先に納骨、あるいは手元供養や散骨する
まずは親族に相談して、「墓じまい」について同意を得ます。近くにお住まいのご親族が定期的に墓参りをされている場合もありますので、そういった方がいらっしゃらないか確認する必要があります。また、将来お子さんに負担をかけたくないと思い、ご自分の代で「墓じまい」をするというお考えの場合も、お子さんのご意見を聞いてみると、案外継いでくれるというかもしれません。
「墓じまい」後の供養方法としては、別の墓地への納骨、永代供養墓への納骨、樹木葬、手元供養、散骨などが考えられます。ご親族の同意を得るときには、同時に、ご先祖の遺骨の納骨や供養方法についても同意を取り付けておくと後々つつがなく進められます。
また、散骨に関してはまだまだ抵抗を感じる方がいらっしゃるかもしれません。散骨する場合も全部を散骨するのではなく、一部は手元に置いておくという選択肢もあります。
「墓じまい」の方向性が固まったら、墓地管理者に相談します。墓地管理者は、墓地の清掃や管理、事務処理などを行っており、墓地の経営主体によって、自治体やお寺、民営霊園などが務めております。また、集落・村落など地域の共同体によって使用・管理・運営されている墓地や、キリスト教信者のための共同墓地などもあります。
改葬するには、墓地管理者に届け出て、遺骨が納められている墓地からは「埋蔵証明書」(場合によっては、移転先となる新しい墓地の「墓地使用許可書」等)を入手して、改葬許可の申請を行います。申請先は、現在の墓地などがある市区町村役場になります。手続きの詳細は、各市区町村、現在の墓地、新しい墓地によって異なりますので、事前に十分情報を収集してください。
なお、散骨や手元供養の場合も「改葬許可証」を取得されるのが望ましいでしょう。遺骨の取り出し後に散骨せずに納骨することになった場合や、手元供養の保管者が亡くなったのちに納骨する場合に、「改葬許可証」が必要となるからです。また事件性がないことを確認するために、「改葬許可証」の提示を求める散骨業者もあります。自治体によっては散骨や手元供養にすると話すと「改葬許可証」を発行してもらえないケースもあるようですが、現在の墓地管理者からの証明だけでも取得しておくとよいでしょう。
また、「墓じまい」にかかる費用が気になるところかと思います。各証明書の発行手数料は無料から数千円程度ですが、寺院の檀家をやめるためには「離檀料」がかかる場合があります。また墓石の解体費用も大きさや形態、場所により高額となる場合があります。古くからのお墓を「墓じまい」するとなると、土葬時代の遺骨が見つかりその火葬費用など想定外の費用がかかることもあります。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、改葬の件数は近年、大きな伸びがみられ、最新2022年度のデータでは、年間 15 万件を突破しています。核家族化や都市部への人口流入、寺離れを背景に、「墓じまい」を行う人はこれからも増えていくものと考えられます。
「墓じまい」、「改葬」についてのお悩みやお困りごとがございましたら、行政手続きの専門家であるわれわれ行政書士にぜひお気軽にご相談ください。