秋の夜長と落語

 

暑い日が続いておりますが、皆さまお変わりありませんでしょうか。

9月は旧暦で「長月」です。語源には諸説あるようですが、夜がだんだん長くなる「夜長月」の略といわれています。なかなか寝付けない秋の夜長に「落語」はいかがでしょうか。最近では寄席に出向かなくても、動画サイトで落語の名作を楽しむことができます。

 

「落語」の演目に、行政書士の前身である「代書屋」(詳しくはコラム行政書士と司法書士)というお話があります。昭和10年代、実際に副業として代書屋を営んでいた4代目桂米團治師匠が創作したもので、その後多くの落語家がバリエーションを手掛けています。

内容は…代書屋のところに様々な依頼人がやってきます。文字を書くことが苦手な方、外国の方、有名人と同姓同名の方など、さまざまな「困った」を抱えた方々です。そしていろいろと代書屋は相談を受けるのですが、なかなか代書屋の質問と依頼人の回答が噛み合わず、書類が出来上がらない…という展開です。

 

筆で代書をしていた昭和10年代から時代は変わり、行政書士制度ができました。依頼される方の「困った」も「書類がうまく書けない」から「複雑な手続きへの対応」などに変化してきました。しかし、実際に依頼される方の「困った」を受け止め「安心」に変えるためには、依頼される方と行政書士とのコミュニケーションにより、問題を一つずつ解決していくことが大切である点は現在も変わりありません。(書類が完成しなかった落語では笑い話でよいのですが)

 

さらに最近は「AIが行政書士業務を行う時代になる?!」といわれております。AIで書類を作成する場合は、必要事項を一問一答形式で入力していきますが、落語の「代書屋」と同じ結末にならないためには、やはり依頼される方と行政書士とのコミュニケーションによって的確な回答を選択していく必要があるのではないでしょうか。

 

私たち行政書士は、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成ならびに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成等を行う専門家として、依頼人の方とコミュニケーションをとりながら手続を進めることができます。

落語には「オチ」が必要ですが、行政書士とのコミュニケーションには「落ち」は不要です。おあとがよろしいようで。