新しい民泊のかたち ~住宅宿泊事業法について~

 

 冬季オリンピックの興奮が記憶に新しいところですが、次はいよいよ2020年の東京オリンピックですね。ここ湘南でもオリンピックにむけて、さまざまな準備が始まっていますが、多くの観光客の動員が見込まれる中、ご自宅や空き家を利用した民泊に関心を寄せておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、まもなく事前届出の受付が開始される民泊の新しい法律「住宅宿泊事業法」(民泊新法)についてご紹介したいと思います。

 これまでは、民泊を始めるためには旅館業法の簡易宿所営業の許可を取得する必要がありました(こちらのコラムでご紹介しています)が、民泊新法では建物を管轄する役所に「届出」をすれば、許可を得ることなく手軽に民泊を始めることができます。

 従来の旅館業法の規定との主な違いは以下の通りです。

(1)民泊は、ホテル・旅館などの宿泊施設ではなく、「住宅」と位置付けられる。

 これにより、従来の旅館業法では許可のおりなかった住居専用地域でも、民泊を始めることが可能になります。

 また「住宅」とは、生活の本拠として台所・浴室・トイレ・洗面設備を有し、宿泊以外の事業に使われていないものをさします。例えば、台所のない事務所やガレージなどは「住宅」とみなされません。

(2)営業可能日数は年間180日まで。

 宿泊日数が年間180日を超える場合は、簡易宿所の営業許可を取得する必要があります。

(3)民泊ホストを「家主居住型」と「家主不在型」に区別し、それぞれに必要な管理を義務づける。

 家主不在型は家主居住型に比べ、騒音などの近隣トラブルや施設悪用などの危険性も高くなりますので、「住宅宿泊管理業者」に管理を委託することが必須となっています。

 また、家主居住型・家主不在型ともに、安全面や衛生面の確保のため、家主には利用者名簿の設置や外国語を用いた注意事項の説明、標識掲示、非常用照明器具の設置、苦情対応などが義務付けられています。

(4)罰則が強化。

 虚偽の届出や無届出での民泊営業に対する罰則が、これまでの旅館業法の罰則に比べ厳しいものとなっています(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)。

 民泊新法の民泊を始めるにあたって必要な書類は、「届出書」「住宅の図面」「登記事項証明書」などです。事前届出の受付が3月15日から開始となりますので、早めに届出を済ませておけば民泊新法の施行日である6月15日から営業が可能です。

 いかがでしょうか?ご自宅の空き部屋などを活用して外国人との異文化コミュニケーションを楽しみたい方は、民泊新法の家主居住型がぴったりかもしれませんね。
 また、空き家を相続して管理にお困りの方は、家主不在型で空き家を有効活用できるかもしれません。

 ただし、届出だけで手軽に民泊が始められるとは言っても、「住宅」について細かい要件があったり、消防法の規定でお部屋の面積などによっては、ホテルや旅館と同じ防火設備を備えなければならない場合もあります。お食事を提供する場合には、飲食店営業許可も必要となります。

 このように、民泊を始めるにあたっては様々な準備が必要となりますので、ご自身で判断に迷うことがありましたら、ぜひお近くの行政書士にご相談下さい。様々な法律の観点から、民泊を始めるにあたって書類作成のアドバイス、収集のお手伝いなど、きっと皆さまのお役に立てることと思います。