“ご家族への最後の思いやり”「遺言書」のはなし

 

外出の折に少し涼みたくて書店に立ち寄ると、「一人で出来る遺言書作成キット」のコーナーが
目につきました。最近の遺言書に対する関心の高まりを反映して、文房具メーカーや出版社が
遺言書作成用セットの販売を始め、よく売れているそうです。
一般的に利用される自筆証書遺言と公正証書遺言の利用状況を見てみると、
2009年に家庭裁判所で検認を受けた自筆証書遺言の件数が約14,000件(法務省「司法統計」)、
同年の公正証書の作成件数が約78,000件(日本公証人連合会調べ)と、いずれも10年前に比べ
30%近く増加し、今後も増加傾向が続くと見られています。
以前は、遺言書に対し後ろ向きのイメージもあったようですが、相続争いなどの問題を
回避する必要性から、遺言書の活用を考えざるを得ない現実も生じてきています。


具体的には、家族にとってどのような財産の配分がそれぞれの今後の生活に資することに
なるかの観点から熟慮の上、財産の配分理由を記載した遺言書を作成する方もいらっしゃいます。
とはいえ、いざ実際に遺言書を作成しようと考えた場合に、まずどのような方式を選択すべきか
疑問を持たれると思います。
その際には、自筆証書遺言と公正証書遺言それぞれのメリット・デメリットを比較してみてから
検討をされるのがよいのではないでしょうか。
全文を自らが手書きする方式の自筆証書遺言は、費用がかからずまた封印をすることで
内容も伏せておけることがメリットです。一方、家庭裁判所で相続人立会いのもと開封をして、
検認手続きを終えてはじめて名義変更などの相続手続きに移ることができることから
時間がかかること、またある程度の法律の知識が必要であることがデメリットと言えます。
公正証書遺言のメリットは、家庭裁判所での検認手続きが不要なため、すぐに相続手続きに
移ることができる点にあります。また、公正証書は公証人が作成しますので、遺言や相続に
関する法律に詳しくなくても、紛争になりにくい内容の遺言書ができる点も挙げられます。
一方、公証役場に支払う手数料等の費用がかかる点と証人2人の立会いが必要になる点が
デメリットと言えます。
個別事情によりどの方式がよいかわからない方または作成した自筆証書遺言が有効か
どうか心配な方は、専門家によるアドバイスを参考にされるのもよいかも知れません。 
行政書士はこうした遺言書作成の支援業務をおこなっていますので、お困りの場合は
お近くの行政書士にお気軽にご相談ください。
お盆休みは今後のご家族のことをじっくりと考えるよいチャンスかも知れません。
ご家族への最後の思いやりに、遺言書の利用を検討してみてはいかがでしょうか。